時計ケース(クレドール個装箱)

時計ケース(クレドール個装箱)


商品を演出する天然漆蝋色仕上げのパッケージ

セイコーの高級ウォッチブランド<クレドール>のパッケージ。天然漆を使い、本作のコンセプトである“生命の樹”から、葉の蒔絵で表した妥協のない漆塗のパッケージ箱に仕上げました。
まずは、いろいろな形のデザイン案から作成し、クレドールのコンセプトに合ったストーリーをもつ数案を提案させていただきました。そこからクライアント社内で検討され、このデザインを選択いただいています。
相談を受けた当初はすべて伝統的な技法で作成されることを希望されていましたが、納期等の兼ね合いからより適切な下地素材をこちらから提案させていただきました。仕上げは妥協せず、天然漆を使った黒蝋色(くろろいろ=鏡面)仕上げの本格的な漆塗箱で完成させています。
加飾の蒔絵は「予算を増額してでも本物にしてほしい」というご要望を確認し、本格的な研ぎ出し蒔絵を施しました。図柄は、数案の中から「ぼかしと木の葉」を提案させていただいています。

私たちは、プロジェクトのコンセプトを考慮して、ストーリーを含めて最初のデザイン案から仕上げや技法を提案させていただきます。お互いのやり取りを練り上げて、本当のご要望まできちんとたどり着いて、より適切な品質の工芸品を提案させていただいております。

Title時計ケース(クレドール個装箱)
Date2019.03
題目懐中時計ケース/商品パッケージ
技法木地留め加工、黒蝋色仕上げ、研ぎ出し蒔絵
素材MDF、漆、純金丸粉1号、本金梨地粉
サイズ幅148 高70 奥148mm
発注者SEIKO Watch Corporation
デザイナー乾陽亮設計事務所

統合した伝統工芸の素材と技法

木地は、長期の経年変化による反りや割れの心配から、丈夫なMDFを使用し、つなぎ目が分かりにくいように留め加工で接合しています。
塗りの下地は、割れや痩せを防ぐため麻を布張りして堅牢にし、サーフェイサー(現代下地)を使用して納期に間に合うように取り計らいました。上塗りは、最高級の黒蝋色仕上げとし漆独特の色艶を引き出しています。蝋色仕上げとは、漆の塗面を平坦に研ぎ、生漆を何度も摺リ込んで磨くことで艶を出し、鏡面に仕上げる漆塗り最高級の技法とされています。
蒔絵は、研ぎ出し蒔絵で純金丸粉1号や本金梨地粉を使い、このクレドールのストーリーにふさわしい贅沢な個装箱になっています。

  1. 木工

    木地は、製品の土台・フレームなどを作る最初の工程です。
    INOUEの木工の基本は、城下町彦根で江戸時代から続く伝統の金仏壇製造で培われた工芸品質です。
    彦根仏壇の木地は、日本建築と同じく釘を使わないホゾ組みを得意としています。材料を吟味し部材の切り出しから継手や面取りに至るまで、妥協のない品質で職人がひとつひとつ手作りする木地は、何世代にも受け継がれる仏壇を支えています。
    INOUEの製造ネットワークは量産が得意な他産地の木工所との繋がりもありますので、プロジェクトに適した木工で対応いたします。

  2. 漆塗り

    漆は非常に高品質で美しい塗装です。ウルシノキの樹液を採取し、ゴミや埃を濾した精製漆が塗装に用いられます。その成分に含まれるウルシオールが空気中の水分と結合し硬化する世界最強の保護塗料のひとつです。
    しかし漆は扱いが難しく、伝統技法で平滑に仕上げるには下地工程から高度な職人技が求められます。下地から上塗りまで何回も塗って研ぐ工程を繰り返して、塗り重ねます。中でも蝋色(ろいろ)仕上げは、漆の塗装面を平坦に研ぎ、生漆を摺リ込みながら何度も磨きあげ、鏡面で奥深い艶を出す漆塗り最高級の技法とされています。
    漆とひとくちに言っても下地の処理から仕上げの方法までさまざまな技法が発展しています。INOUEは仏壇製造で培った漆工への深い知見から、変わり塗り・色漆から最高級の蝋色まで、適した漆塗りの技法とその職人を提案しています。

  3. 蒔絵

    漆で絵や文様を描き、金粉などを蒔きつける漆芸技法を蒔絵(まきえ)と呼びます。広義では螺鈿や切金などを含んだ加飾を概ね蒔絵と呼ぶこともあり、金粉のみで表現したものを特に金蒔絵と呼んで区別することもあります。 蒔絵は日本で生まれ、独自に発展した日本のみに存在する伝統漆工芸技法です。平蒔絵や高蒔絵、さらに平蒔絵を一旦漆で埋め直し砥石や研炭などで蒔絵後の塗面を研ぎ出す研出蒔絵(とぎだしまきえ)など様々な技法が生まれました。さらに蒔き終えた金粉や銀粉の上に透き漆や色漆で塗り固め、研ぎ出して表現したり、金粉や銀粉等の号数による細かさなどの種類によって奥行きを表現したり、多彩な加工手法を駆使する事により表現の幅が時代と共に発展してきました。 また、安価な加工手法として、金粉を蒔いたままの「消し蒔絵」やシルクスクリーン印刷を応用した「スクリーン蒔絵」もあります。 INOUEでは様々な技法を持つ蒔絵職人のネットワークがあり、ご要望に適した技法を手配しております。

  4. 塗装(カシュー・ウレタンなど)

    INOUEでは、伝統工芸の高度な天然漆本堅地をはじめ、同じ漆科のカシュー(和名:勾玉の木)から採れる天然樹脂のカシュー塗料や、合成樹脂のウレタン塗料まで、あらゆる種類の塗装方法を可能としています。
    サイズもコーヒーカップなどの小さなものから建材に使用する大きなものまで幅広く塗装可能です。
    仏壇工芸の要とも言える塗装の品質は、常に厳しい目をもって吟味しています。
    INOUEは、技術力を持った職人のネットワークを有し、あらゆる塗装のご要望にお応えします。