全14レースそれぞれの文字を入れたWRC2のFORUM8トロフィーを手がけました。
「FORUM8 WRC2 Most Stage Wins Award」は、WRCトップレベルを目指す将来有望な選手育成を目的として株式会社フォーラムエイト(https://www.forum8.co.jp)によって設立されました。日本企業であるということから、日本を象徴するようなトロフィーを贈りたいとのご意向を受け、工芸でのトロフィーを提案させていただいています。
日本の形をデフォルメしたものをトロフィー本体とし、赤い円とともに浮き上がっているように台座に片持ち支持で取り付けました。面取りは大きめにし、ふっくらとした立体感のある木地を作り、仏壇技術と同じ方法で塗装して蒔絵を描いています。蒔絵は仏壇蒔絵でも得意である桜と紅葉、つまり春と秋を同時に描き、絶えることなく巡り続ける季節を表す吉祥文様としました。そこに道と車を加え、1年間戦い続けるWRC2にふさわしい意味を加えています。
Title | FIA World Rally Championship WRC2 トロフィー |
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Date | 2025.01 |
題目 | トロフィー |
技法 | 木地、塗装、蒔絵 |
素材 | 木地:MDF 塗装 本体:漆代用塗料 台:ウレタン塗装 手描き蒔絵:漆、本金粉 台印字:インクジェット UV印刷 |
サイズ | 高さ28.5㎝ 幅17.0㎝ 奥行き9.0㎝ |
デザイナー | 乾 陽亮 |
撮影 | 大野 博 |
複数の木地を同じ形で、特に納期が非常に厳しい受注であったため、木工は短期間の納期に間に合うレーザーカット加工に対応できる工房に発注しています。本体塗装、蒔絵、組み立ては彦根で行っています。トロフィー本体は、台座から浮き上がるように取り付ける提案をしたため、台の中を工夫して簡易ながらも効率的で十分に強度のある接合方法を提案させていただきました。
木地は、製品の土台・フレームなどを作る最初の工程です。
INOUEの木工の基本は、城下町彦根で江戸時代から続く伝統の金仏壇製造で培われた工芸品質です。
彦根仏壇の木地は、日本建築と同じく釘を使わないホゾ組みを得意としています。材料を吟味し部材の切り出しから継手や面取りに至るまで、妥協のない品質で職人がひとつひとつ手作りする木地は、何世代にも受け継がれる仏壇を支えています。
INOUEの製造ネットワークは量産が得意な他産地の木工所との繋がりもありますので、プロジェクトに適した木工で対応いたします。
漆で絵や文様を描き、金粉などを蒔きつける漆芸技法を蒔絵(まきえ)と呼びます。広義では螺鈿や切金などを含んだ加飾を概ね蒔絵と呼ぶこともあり、金粉のみで表現したものを特に金蒔絵と呼んで区別することもあります。 蒔絵は日本で生まれ、独自に発展した日本のみに存在する伝統漆工芸技法です。平蒔絵や高蒔絵、さらに平蒔絵を一旦漆で埋め直し砥石や研炭などで蒔絵後の塗面を研ぎ出す研出蒔絵(とぎだしまきえ)など様々な技法が生まれました。さらに蒔き終えた金粉や銀粉の上に透き漆や色漆で塗り固め、研ぎ出して表現したり、金粉や銀粉等の号数による細かさなどの種類によって奥行きを表現したり、多彩な加工手法を駆使する事により表現の幅が時代と共に発展してきました。 また、安価な加工手法として、金粉を蒔いたままの「消し蒔絵」やシルクスクリーン印刷を応用した「スクリーン蒔絵」もあります。 INOUEでは様々な技法を持つ蒔絵職人のネットワークがあり、ご要望に適した技法を手配しております。
INOUEでは、伝統工芸の高度な天然漆本堅地をはじめ、同じ漆科のカシュー(和名:勾玉の木)から採れる天然樹脂のカシュー塗料や、合成樹脂のウレタン塗料まで、あらゆる種類の塗装方法を可能としています。
サイズもコーヒーカップなどの小さなものから建材に使用する大きなものまで幅広く塗装可能です。
仏壇工芸の要とも言える塗装の品質は、常に厳しい目をもって吟味しています。
INOUEは、技術力を持った職人のネットワークを有し、あらゆる塗装のご要望にお応えします。
伝統工芸はある範囲ではとても高品質です。しかし、手作りであるため、その範囲には「条件」と「限界」があります。
例えば、漆の品質が担保できない溝、ロクロで作れない形、誤差が生まれるので組み合わせできない形状など、その設計には工業製品とは異なる知識が必要です。
INOUEでは、それぞれの伝統工芸の知識を活かした形状の調整を含め、それぞれの伝統工芸に造詣の深いデザイナーとのネットワークも持っていますので、必要に応じて共同で取り組んでおります。
もちろん企画やデザイン段階のご相談も対応しております。